管理職の最大のお悩みは、なかなか成果を出すことができない部下(下位人材)をどうすればよいのかということです。

管理職としてチームの運営を委ねられたことへの責任感から、時間を割いてでも「できない人」を何とかしてあげようと考えるのは自然の成り行きです。

その一方で、業務能力が高く成果を出している上位人材については、自由にやらせておいても大丈夫だという理由で、ほとんどの方が放置しているようです。

 

現に、仕事が抜群にできる部下のさらなる育成が、研修受講者から課題としてあげられることは皆無と言っていいでしょう。

下位人材の対応には時間を割くが上位人材は放っておく、ここに新任管理職の陥りやすい罠があります。

そもそも組織の中は『2・6・2の法則』があります

具体的には
①上位2割:効率的・生産性が高く、最も優れたグループ
②中位6割:上位2割にも下位2割にも属さない平均的なグループ
③下位2割:非効率的・生産性が低く、(俗にいう)パッとしないグループ
に組織はいつもなる、という法則です。

下位2割の部下を「育成」する価値があるか
そもそも、会社が期待する管理職の役割はチームの成果の最大化」です。
プレイヤーの時は、多少後輩の面倒を見ていたとはいえ、基本的には自分個人の成果の最大化が求められていましたが、管理職としてチーム運営の権限を与えられたのですから、チーム全体の成果を最大化させることに責任を持つのは当然のことです。

ということは、チーム内の部下の育成方針も、「チームの成果の最大化のためには何を優先させるべきか」という視点で考えるべきなのです。

しかし、まだマネジメントに慣れていない新任管理職の方々は、部下の育成が大事だという一般論だけで、気になっている下位人材の育成に条件反射的に時間を割いてしまうのです。

その結果何が起きるのでしょうか?
実は、チームの競争力の弱体化を招く可能性があります。

 

なぜならば、現実のビジネスでは、上位人材の能力の最高到達点がチームの成果を決めることが頻繁に起きるからです。

つまり、放置された上位人材の成長が鈍化し、頂点力が弱体化して勝負に勝てなくなるのです。

下位人材の成長を支援して「底辺アップ」を図ることよりも、上位人材のより一段の成長を支援する「頂点アップ」を優先させるほうが、チームの成果の最大化につながるケースがあります。

 

80対20の法則という法則があります。
この法則は、イタリアの経済学者パレートによる「国の富の8割は2割の富裕層のもとに集まる」という法則の発見に由来し、「ニッパチの原理」「パレートの法則」とも呼ばれています。

この法則は、「取り扱う商品のうち売れ筋の上位2割の商品が全体の8割の売上を稼ぎだす」「2割の数の顧客が8割の売上をもたらす」「2割の顧客からのクレームの対処に、対応時間の8割を費やす」など、経済活動のさまざまな場面にあてはまります。

つまり、この法則を応用すれば、最も成果の上がる2割の対象を見つけ出し、そこに資源を集中させることで8割の効果を得られるので、時間や労力の効率化につながるのです。

このようなビジネスでは、上位2割の人材の成長を徹底的に支援して、チームとしての能力の「頂点アップ」を図ることが優先課題となります。

具体的には、

①より厳しい業務目標

②裁量範囲の拡大

③管理職自身による業務を通じたトレーニング

などが基本的な育成方針になります。

 

チームの中で管理職自身が頂点人材であれば、自らプレイヤーとしてビジネスを牽引すると同時に、次の頂点人材の育成に優先的に時間を使えばよいでしょう。

組織間の横移動で管理職になり、部下の中に自分より実務遂行能力に優れた人材がいる場合、対人交渉力や洞察力・企画力など自分が得意な分野の業務スキルを伝えることで、ひとまわり大きなビジネスパーソンとしての成長を支援します。

あるいは、社内外の一流のビジネスパーソンとの接点を作るなどして、「自分はまだまだだ」ということに気づかせ、向上意欲に火をつける機会を与えることも重要です。

 

下位人材の育成を優先すべき場合とは?
もちろん、すべてのビジネスについて、上位人材の育成を優先すべきだというわけではありません。
仕事の内容によっては、下位人材の育成を優先すべき場合もあります。

大切なことは、担当している仕事の性格を理解せずに無方針で人材育成に臨んだり、あるいは、「上位人材は放っておいても成長する」「6割の人材育成に注力すべきだ」「下位人材の底辺アップこそが大切だ」など、巷にあふれる一般論に影響されて思考を止めてはいけないということです。

あくまでも、目の前にある自分のチームの特性を踏まえたうえで、成果の最大化のために優先させるべき人材育成の方針を自分で判断すべきだということです。

 

チームの特性と重点育成方針について

・下位人材の育成を優先すべき仕事とは、

1人のミスが全体の仕事に影響を及ぼすような性格の仕事です。
そのミスによってチームのアウトプットがガタガタになるからです。
厳格な安全対策が不可欠な工事現場や、命に関わる医療の現場、公共交通機関の運転手やパイロットなどがその例で、下位人材の能力レベルが最低要求ラインを超えるための「底辺アップ」が優先課題となります。定期的な能力チェックや技能向上のためのトレーニングに多額の予算をかけている企業も少なくありません。

彼らに対する育成方針は上位人材のそれとは少し異なり、
① クリアすべき最低水準の明示、
② 能力に応じた裁量範囲の設定、
③ ③一番身近で働く人によるトレーニング
などになります。

・ミドル人材には上位人材の影響力を活用する
上位と下位にはさまれたミドル人材の育成はどのように考えればよいのでしょうか。
部下の数が3~4名と少なければ、管理職自ら指導することができますが、10人を超えてくると、全員に手をかけることは必ずしも効率的ではありません。
そのような場合には上位人材の力を借りるとよいでしょう。
上位人材にミドル人材育成のための協力をお願いすることにより、次々と成果を出していくカッコいい上位人材を見て、「早くあの人のようになりたい」というメンバーの気持ちを刺激します。

 

管理職の皆さん、「2・6・2法則」を理解し、腹をくくりましょう!

あなたの組織は、あなたがスーパーマネジメントをしても「2・6・2」は存在し、「下位グループ」は無くならない、事実があります。

仮に上位のみを集めても、下位のみを集めても、最後は「2・6・2法則が適用される。ということです。

ある資金力のあるプロ野球チームが、優秀な選手を集めても、なかなか優勝できない
→結果的に、元優秀な選手も「2・6・2法則」により、「中位」又は「下」位グループを形成するという事実があります。

ではどうするの?
①中位、下位グループを切る(排除)することを考えるのではなく、いかにそのチーム(全体の8割)のモチベーションアップ、業務指導方法の変更、評価の分析などを行い、それぞれ(中位、下位)グループをどう活性化するか? が重要です。

管理職としてすべてのメンバーに成長してもらいたいという気持ちはとても大切です。

しかし、さらに大切なことは、自分のチームの特性を良く見極めて、チームの成果を最大化するために、正確にはチームの成果を持続的に最大化するために、その気持ちを具体的な育成方針に落としていくことです。

競争力のある強いチームの中にいることでメンバーが多くの成長機会に出会い、最終的には一人ひとりの成長が促進されるのです。